自転車で100キロ走った話①
とある晩秋のこと。某有名バンドが新メンバーを募集するというので、どんな選考かと覗いてみたところ、なんと2018人も募集していた。
兄はすぐさま弟を誘うべく、スマアトフオンを手に取り、文字をフリックしていく。
「これ、面白い。やろうぜ。」
メンバー募集のお題はこうだ。
・30秒のパフォーマンス動画を投稿し自己PRせよ。
秀でた動画やパフォーマンスを披露した2018人をメンバーとして迎え入れ、輪っかが5つある世界的祭典の応援をするという、ハートフルな企画はしかし、ダンスや音楽的な技術を持つ連中にとって、格好の檜舞台だった。
かたや、兄。
音楽的な技術を持ち合わせなければ、踊るどころか資本主義社会に踊らされている毎日である。
なにか、ないか…。
ふと、思い付いたのが「自転車」であった。弟の住む町とは200キロ離れている、この距離を半分ずつ、2日間で走破しよう。俺にできるアピールなんて、それぐらいしかない!と、心を決めた。一念発起したように自分自身を見せかけた。
本当はただ、単純に、純粋に、冒険遺伝子に揺さぶられただけ。思いっきり、自転車を漕いで、遠くまで行ってみたかった、その気持ちだけである。
ここからの展開は早かった。
兄弟似た者同士、どんどん決まっていく。
兄:静岡から浜松
弟:浜松から半田(愛知)
静岡を自転車で出発し、浜名湖を目指す。
浜名湖に19時に落ち合い、一晩ちゃんとした
ホテルに泊まる。翌朝弟は、引き受けた自転車で
半田まで帰るというプランだ。
道中を動画撮影し応募しよう。
合格したら、柑橘系のバンドメンバーだ。
歌も躍りもないけれど、何かしたい気持ちだけで
家康ゆかりの浅間神社から、浜名湖へ。
(続く予定)